私が夜な夜な家をでてふらついてるのを托人は心配してたけど止めはしなかった。

ただ、ときどき家を出ると門の前にいて、何も言わずについてきて一緒にケンカすることもあった。


托人が何をしたかったのかはよくわかんないけど、私はなんだか居心地がよかったんだ。






―夏の終わりに、両親の争いは終止符を打った。

喜ばしいことに仲直りしてくれて、離婚することはなかった。



それはぜんぶ亜実子のおかげなんだけども…その話はまた今度。



私は髪を黒く染めなおして、笹岡町に行く事もやめた。

そして亜実子と同じ高校…すなわち、ここを志望して入学したというわけだ。




―“凶犬”はいなくなった。

だけどそう簡単にその存在は、人の記憶から消えるものではなくて……