祖母が出かけた隙に、弱点を探すべくこっそり和室を物色した少女は、飴色になった桐箪笥の奥に古びた紙を見つけた。

引き出しの隙間から床に落ちてしまった、埃まみれの紙。

重ね合わされた一枚には、和歌が。

もう一枚には、大きな桜の木と大好きな祖母……。

そして、去年亡くなった優しい祖父に似た、背の高い男の人が描かれていた。


少女はその“ラブレター”を、祖母が昼寝に使うそばがら枕のカバーに差し込んだのだ。

帰宅した祖母は、今その枕で眠っている。


「ふーん。
たまには粋なイタズラもするんだね、姉ちゃん」

「たまにはって失礼な!
てゆーかイタズラじゃないしっ!」

「ちょっ、静かに」

唇の前で人差し指を立てた少年が、不意に顔を強張らせる。

少女が視線の先を追うと、そこには陽だまりの中でまどろむ祖母の横顔。

まるで微笑むように穏やかな……その頬には、光る雫があった。


(夢で逢えたらいいね、おばあちゃん!)


姉弟は、そっと部屋を後にした。(了)