いつもと同じように満員電車にのまれ帰る途中、みつけた、あの真黒な髪。

昔よりも長くのばして上でくくっていたがすぐわかった。嶋山朝日だって。

接触はしないはずだったが、そうもいかなくなって結局助けてしまった。

『カキ・・・』

懐かしく響く声に嬉しさと悲しさが込み上げてきた。

本当は何度だって願ってた。この瞬間を。

逢いたかった。でも、逢えなかった。

あいつは優しいから。ときどき心配になるほどお人好しで、だからこそ、傷つくことが何度もあって。それでも人が好きだというあいつの姿を見たくなかった。


でも、逢いたかったんだ。

どうしようもなく懐かしくて、あんな安っぽい思い出が忘れられなかった。

あいつはコートから逃げた俺を責めもしない。

ただ横にいる。それだけだった。

それだけで、救われてしまった。

自分勝手だってわかってるけれど、またあいつと一緒にいたいと思った。

あの頃に戻れたなら。