あのころは中学1年生のまだまだガキで、カキとはバカばっかりやっていたことを思い出す。でも、今目の前にいるカキはあたりまえかもしれないけれど、少し大人っぽくなっていた。

「お前も災難だったなー」

わしわしと頭をなでてくるその手は昔よりも大きくなっていて、なんだか胸がつまって泣きそうになってしまった。

「立てるか?」

「・・・」

声は少し低くなっていたけど、やっぱり人よりも高い声で響く。ゆっくりとカキから発せられる音をいつまでも聞いていたいと思った。

「まぁ落ち着くまで待っててやるよ。もう暗いしおくってってやるよ」

「へっ!?」

あまりにも不意打ちで変な声を出してしまった。

「でも・・・悪いよ」

「いいって!気にスンナ。飲み物買ってきてやるよ」

はははっと笑って自販機に向かっていく背中を見送りながら、カキがなでてくれた頭をそっと押さえる。まだ、カキの手の温かさが残っているような気がした。

「ポカリでいいよなー?」

ちょっと遠くから、自販機から顔だけひょこっと出す姿がほほえましくて、そして懐かしくて、微笑んだ。

「いいよー! ありがと」

よくテニスが終わったあとに二人でポカリを飲んでいた。カキも覚えてたんだろうか。

「ふぃー」

可笑しな声でポカリを渡してくるカキは、昔と変わらず優しかった。あのころに気持ちが帰ってきたみたいだ。

「もう立てるのか?」

「大丈夫」

ぱんぱんっとスカートを掃って立つ。

「再開のカンパーイ」

「ははは」

ポカリでカンパイしてあたしたちは歩き出した。