ふと気がつくと、ぶたさんはあの時へし折った木の前に立ち尽くしていました。 折られた木はもう片付けられていて、そこには古ぼけて腐った木の切りかぶしか残っていません。

 ぶたさんは、そっと切りかぶの先に触れました。 へし折った後なので、ささくれた切りかぶは、容赦なくぶたさんの皮膚に刺さっていきました。 ズブズブと刺さっていく木の破片。 でも、不思議と痛みがこみ上げてきません。 おかしいなあ、とぶたさんは、もう少しだけ力をこめて切りかぶに触れてみました。 ズブズブ。 指から血がにじんできましたが、それでも痛みはありません。