黒豚が売りに出されていた時、匂いと色で、すぐにその肉がぶたさんだということはわかった。 確かに、みんながみんな極悪人じゃなくとも、本当の極悪人がいないわけじゃない。 ぶたさんの気持ちを利用して、純粋な悪意で染めようとする人もいるかもしれない。

 それを現実として見てしまったから、気付いてしまったから、家に着いたと同時に、自然と涙がわいてきたんだ。 自分があの時、傷つけすぎてしまったせいでこうなってしまったんじゃ。 それともあの時、いや、この時―。 でも、もう、どうすることもできない。 こみ上げてきた後悔も、飲み込むしかないんだ、って思ったの。