「先生 帰ります」


紅の声がして
俺は慌てて弁解をしながら
やっと体を起こした。


照れ笑いをするしかなかった。



俺は担任として
違う顔を生徒に見せていた。


決してもう
すきを見せずに壁を高く積み上げてきた。



でもこんな姿を見られたら
もう笑うしかなかった。



「今日の先生が本当の先生でしょう?」


紅の言葉に動揺した。



動揺して舞い上がって話す
俺を冷静目で
見ているのがわかって
ドキドキしていた。


「先生……現実を歩かなきゃ
全部受け止めて前を向かなきゃ…」



紅の言葉が胸に突き刺さり


その目が同情していると
思うとこれから
紅にどう接していこうかと
酔いもさめてしまった。



「ははは・・・・
なんだか月城の方が先生みたいだな。」


そう言って
バカみたく笑ってごまかすしかない。


生徒に同情されて
俺はいったい何をしてるんだろう。