カガーさん。

それはこの家の執事さん。めぇーめぇーと鳴くのは羊さん。すごくピリピリしてましてですね。まるでその凛としたまがまがしさは幾人もの命を奪い、その生き血を啜ってきた日本刀のような感じでございましてですね。

なんせ怖いのです。いつも笑みをたたえているその黒目がちのつぶらなおめめが怖いのです。

ただ悪い方ではないのです。

「ただいま。カガーさん。友達の家でテスト勉強してたらちょっと遅くなっちゃって…ごめんね。お父さんとお母さん心配してた?」

おっしゃ決まったぁー。今の俺だったらアカデミー賞主演男優…いや女優賞にノミネートされる自信が…あ、いやそうじゃなくてね。今最大の悩みは俺の部屋がどこにあるかわからないということだろーが。

「大変心配なさっておられましたよ。実はまだリビングでお待ちになられてます」

ひょえー。

俺、やだよ。会いたくねぇ。

「でもあたし疲れちゃったの。お風呂に入って今すぐ寝たい気分だわ」