なんで床を大理石にする必要があるのかわからない。

あぁ、わかったぞぉー。

コーヒー牛乳がこぼれても、染みにならないようにってことでしょー。

コツコツコツコツ。響くは俺の足音。上を見上げると何十メートルと遥か遠くに広がる強化ガラスの天井に、跳ね返っては広がる俺の足音。

ロマンチックやねぇー。お星さまやお月さまが見える天井。そして真ん中には大地震が起きれば間違いなく凶器になりうるシャンデリア。

だがしかし俺はロマンチックでもなく、凶器なシャンデリアもいらんのだぁー。

あれ。

てかさぁーあ。

あのさぁーあ。

俺の部屋どこだっけかぁー。

うわー。家ん中で迷子とかしゃれになんねぇー。

「お帰りなさいませ。お嬢様」

あ。じぃだ、じぃ。いや、じぃじゃないんだけど。カガーさんだ、カガーさん。

深々と俺に向かって白髪頭を下げる初老の男性に向かって、俺も思わず頭を下げてしまった。