僕はますます分からなくなってしまいました。

病気をしているわけでもなくて、たまに散歩もしていて、いじめを受けていたわけでもない。

それなのに学校に来ない、来れない理由は何なのでしょうか。

「担任もたまに会いに行くんだけど、話もしてくれない。って言ってたし何なんだろうね」

恵ちゃんは小さく「うーん」と唸りました。

その時、僕はあることに気付きました。

「恵ちゃん、制服にいっぱい埃がついてるよ?」

「えっ、うそ?新田くん取って取ってぇ」

「ははは、はい」

僕は背中に付いていた埃を優しく手で払い落としました。

「いやだなぁ、たぶんお婆さんのお店掃除してる時についちゃったんだな」

眉を寄せた恵ちゃんでしたが、その顔はどこか清々しい様子です。

「あれから毎日お婆さんのお店行ってるんだよね。偉いなぁ」

僕がそう言うと恵ちゃんは優しい顔で首を振りました。

「ううん。どれだけお手伝いさせてもらったって私のしたことは消えたりしないもの。偉くなんてないよ」