次の日の朝。

僕が教室に向かっていると、階段の踊り場で恵ちゃんと礼雄くんを見ました。

「……で、何?」

恵ちゃんはじっと礼雄くんを見つめ、ぐっと拳を握りしめます。

「ごめんなさい!」

深く頭を下げる恵ちゃん。


頭を持ち上げることなく続けるのでした。

「あの時のこと今更謝ったって済むことじゃないけど、本当にゴメンなさい」


礼雄くんは何も言いません。


「もう本当に二度とあんなことしないわ。それにこれからは、あのおばあさんのお店でお手伝いをさせてもらうことになったの……だから」

ゆっくり顔を上げる恵ちゃん。

その背中からは悪意の芽が散っていきました。

「別に。オレには関係ねぇ」


礼雄くんは少しだけ笑っていた様にも見えました。


おばあちゃんのお店で悪意の芽が散らなかったのは、本当の罪は万引きでなく

罪を他人にかぶせて、それに目をそらしていたからと言うことなのでしょうか。

ね、神様?