お店を出ると恵ちゃんが僕に頭を下げました。
「ありがとう新田くん。一緒に来てくれたおかげで、お婆さんに謝ることができたわ」
僕は首を横に振ります。
「ううん。恵ちゃんが勇気を出したからだよ。だからおばあさんも許してくれたんだよ」
恵ちゃんの手にはスーパーの大きな袋に入れられた、洗濯剤と石鹸とタオルがあります。
「私、もう二度と万引きなんかしない。いつか働いておばあさんに盗んでしまった分の、ううん、その何倍も何倍ものお返しをするの」
「……うん。恵ちゃんならきっと出来るよ」
恵ちゃんはいつもみたいに笑って帰っていきました。
夕暮れで暗くなると、おばあさんのお店に小さな灯りがつきました。
おばあさんの優しさと、粋な計らいに感動した1日だったのでした。