学校に着いたのは登校時間の5分前でした。

「新田くんおはよう。」

席につくと恵ちゃんはもう一時間目の数学の教科書を開いていました。

さすがクラス委員長、尊敬です。

「おはよう恵ちゃん。」

「あはは、新田くん寝癖ついてるよ。」

そう言って恵ちゃんは僕の後ろ髪を撫でてくれました。

「わー、本当だ。ありがとう恵ちゃん。」

「いいえ、どういたしまして。」

にこっと笑って恵ちゃんは教科書に目を落としました。

真面目だし優しいし、どうして恵ちゃんも依頼書に書かれていたのか分かりません。

それに、このクラスの人達もやはり悪さをするなんて思えないのです。

(あ……礼雄くんだ。)

するとチャイムと一緒に礼雄くんが教室に入ってきました。

なんだか今日はちょっと不機嫌そう。

「……何でああ仏頂面かな。」

「えっ?」

恵ちゃんの方を向くと恵ちゃんは「何でもないよ」って言って目をそらしました。

仏頂面。

仏頂面かぁ、言うなぁ恵ちゃん。