鏡華さんは足を止めました。
そして僕に振り返ります。
「ふぅ。あんたか由美さんに近づかなかったら私はネグレクトとは思わなかったわ。だから、あんたに礼を言われる覚えはない。」
僕が由美さんと話をしたから鏡華さんが気付けた?
だとしたら尚更、僕は鏡華さんに感謝しなくてはいけないと思うのです。
「鏡華さん、どうしてあんなに育児に詳しかったんですか?天使の仕事をする為に勉強したんですか?」
鏡華さんは左斜め上を見ました。
そして、僕をじっと見つめます。
「あたしね保育士目指してたのよ。死んじゃったから何の意味もないと思ってたけど、なかなか使えるものなのね。」
鏡華さんは白い羽を指差してから、僕の背中を指差しました。
「……でも。」
僕はそれは納得いきません。
だって今回、由美さんを救ったのはやっぱり鏡華さんなのだから。
「あんたが頼りない後輩なのは分かったわ。でもあんたなりに今回は頑張ったじゃない。だからそれはあげる。ま、勝負はあたしの完勝だけどね。」
そう言って鏡華さんが背を向けると、鏡華さんの背中が光り輝きました。
そこには何十もの白い羽が輝いていました。