由美さんを心配しているのでしょうか、赤ちゃんはいつの間にか泣き止み由美さんをただじっと見つめていました。

「これからはもっと外に出ることね。公園とかでママ友達を見つけるべきよ。そうしたら、赤ちゃんに風邪薬はダメよって誰かが教えてくれるわ。」

鏡華さんはテーブルの上に置かれた風邪薬を指差して笑いました。

「……はい。」

由美さんも涙を拭いて、風邪薬を見ながら笑いました。

「それから、赤ちゃんは煩く泣いてるわけじゃない。大好きなママと会話をする為に泣いているの。どんな鳥の綺麗な鳴き声よりも、ずっとずっとあなたを思った泣き声なのよ。」

小さな古びた鳥かごが部屋の灯りをわずがに反射させていました。

由美さんにとってはあの鳥かごにいたシロウと言う鳥が、唯一由美さんと意志を交わしてくれる大切なものだったのかもしれません。

でも、これからは大丈夫なはずです。

小さくてまだ言葉もないけれど、一生懸命に身体を使って、大好きな由美さんと意志を交わしてくれる赤ちゃんがいるのだから。