「何って……何も……」

由美さんは赤ちゃんを抱き締めました。

「ほぎゃ、おぎゃあ。」

母親のいつもと違う様子が分かるのか、赤ちゃんは泣き続けています。

「私はこの子に何もしないわ。何も……だって。」

僕は言葉が見つからずにただ涙が零れていきます。

救いたいのに。

赤ちゃんを由美さんを救いたいのに僕には言葉が出てこない。

「何もできないのよね?」

その時、鏡華さんが姿を現しました。

「あなた夕方の……」

鏡華さんを見た由美さんの顔が引きつりましたが、鏡華さんは気にせずに続けます。

「何もできないのよね。いいえ、何も分からないのよね?」

「……あっ。」

由美さんはビクッと肩を揺らしました。

その表情は段々と曇っていきます。