その夜。

星もあまり出ていないような暗闇の中で由美さんの部屋には小さな灯りがともっていました。

「さぁ、ねんねしましょうね。」

赤ちゃんを抱き抱えながら由美さんが優しい声でそう言います。

しかし。

「おぎゃ。おぎゃあ。」

赤ちゃんはご機嫌ななめの様子で、一向に泣き止む気配がありません。

「……はぁ。どうしたらいいのよ……」

赤ちゃんを揺らしていた腕が次第に止まり、泣き続ける赤ちゃんを由美さんはただじっと見つめます。

「シロウは綺麗な声で泣いたのに、あなたは煩くしか泣かないのね。」

ぼーっと見つめる由美さんにまた悪意の芽が現れ始めていました。

「由美さん!」

「……えっ!?」

僕は姿を現わさずにはいられませんでした。

由美さんは驚きます。

「あなたは夕方の小さな郵便屋さん?どうやって部屋に?」

泣き続ける赤ちゃん。

由美さんは僕の方だけを見ています。

「赤ちゃんをどうする気なんですか?」

ぽろっ。と一滴、僕の瞳から涙が零れ落ちるのです。