「はぁ。」
僕は悪意の芽が見えた時の由美さんの顔が焼き付いて離れません。
とぼとぼと由美さんのアパートから離れようとした時。
「ずいぶん深刻な顔ね。」
そこには鏡華さんがいました。
「あ、鏡華さん……あの。」
僕は一部始終を鏡華さんに話してみることにしたのです。
薬局のこと。部屋に招かれたこと。そして。
泣いている赤ちゃんを見た由美さんに悪意の芽が見えたこと。
全てを鏡華さんに伝えました。
「……なるほどね。」
鏡華さんは真剣な表情です。
赤く染まった空を見上げ、鏡華さんが言いました。
「よし、あたしも一肌脱いであげるわ。彼女を救うわよ。」
「はい。」
その時、鏡華さんの背中に沢山の白い羽が見えました。
それは、安心を僕に感じさせるには十分の鏡華さんの力でした。