赤ちゃんが泣き出した時。
僕ははっとしました。
「由美さん……?」
泣く赤ちゃんを見つめる由美さんに悪意の芽が見えたのです。
僕の声に由美さんは赤ちゃんを抱き抱えました。
「お腹すいた?それともオムツかな?機嫌が悪くなっちゃったかな?」
赤ちゃんをなだめながら言う由美さん。
僕はもう1つのことに気付いてしまいました。
「由美さんもしかして、その子と2人で?」
寝室の隅に重ねられた洗濯物は明らかに女性1人のものだったのです。
その中に数枚紛れ込む、小さなベビードレス。
「うん、この子の父親は何処か行っちゃったし、両親とは疎遠だしね。」
母親に抱かれて安心したのか赤ちゃんが泣き止みました。
重たい沈黙が流れます。
「あの、僕そろそろ……」
オレンジジュースを飲んで僕はそう言いました。
「そう?それじゃあありがとうね小さな郵便屋さん。」
そう言って最後は笑顔で見送ってくれた由美さんでしたが、僕は心配でなりませんでした。