一度のベルでは由美さんは出てきてはくれませんでした。
僕はもう一度ベルを鳴らします。
ピンポーン。
しばらくして足音が聞こえます。
「何なの本当にしつこいわね!」
扉を開けるなりその一言。
鏡華さん相当怒らせてしまっていたみたいですよ。
「……っと。ごめんなさい、何かご用かしら?」
僕はポケットから写真を取り出します。
「お薬屋さんで見つけておばあちゃんに届けてあげてって。どうぞ。」
写真を手渡すと、ほんの少しだけ由美さんの顔がほころびました。
「あら、ありがとう。大切な物だったの。」
そう言って由美さんは写真を大事そうに財布にしまいました。
「良かったらジュースでも飲んでいく?小さな郵便屋さん。」
にこっ。と笑った由美さんは薬局で頭を抱えていた人は別人みたいに輝いていました。
「はい、ありがとうございます。」
僕は由美さんの家にあがることになりました。