「待ってください。」
僕はスーパーの駐車場でとみ子さんに追い付きました。
「……もう、なんなの?いい加減にしてちょうだい。」
とみ子さんはまだ僕をにらんでいます。
「……あのお菓子は自分で食べる為に選んだんですか?」
「……?娘が好きなのよ。」
その言葉が出た時、ちょっとだけ優しい声がしました。
「たまに食べるチョコって美味しいですよね。」
僕はチョコの味を思い出すだけで笑顔がでます。
「でも、お母さんが買ってきてくれたチョコも美味しいけど。僕はチョコを買ってもらえなくてもお母さんと買い物に行くのが好きでした。」
「…………。」
とみ子さんの顔が柔らかくなりました。
そして涙を堪えている様に見えました。
「今度は娘さんと一緒に買い物に来てくださいね。」
僕は笑って手を振ります。
とみ子さんは下を向いたままでした。