「のんちゃんは私達の一つ下の女の子で、中山くんの家の近所に住んでた子なの。
ピアノが上手で明るくて、私には妹みたいに可愛い存在だった」
僕はただじっと恵ちゃんの話に耳を傾けています。
「小学生になっても放課後になるといつも3人で遊んでいて、何だかもう一緒にいるのが当たり前になってたわ。
でも……」
「でも?」
恵ちゃんは開いていた教科書をパタンと閉じます。
そして僕を一度見て、礼雄くんの方を向きながら続けるのです。
「昔から身体が弱くてね。生まれた時から腎臓に病気があったみたいで、2年前から入院しているの。
人工透析?とかいうのもしていて、私達は15歳になるまで病室に入ることもできないって看護婦さんに言われてしまったわ」
斜め下に落とされた視線。
僕はただ一言「悲しいね」って口にしていたのです。