『カツン』『カン、カツン』

病室の窓に何かが当たる音がしました。

少女はゆっくりと病室の窓を開けます。

まだほんの少し冷たい風が流れ込みます。

「ふふ、レイちゃんまた来てくれたんだね」

礼雄くんは口元だけ笑うのでした。

「身体大丈夫か?希美(のぞみ)。

そろそろ前のやつが枯れる頃かな、って思って。ほら……」

礼雄くんは一輪の赤い花を差し出します。

希美ちゃんはそれを受け取ると鼻を近付けました。

柔らかい香りが鼻を刺激します。

「良い匂い。ありがとうレイちゃん」

「だからレオだってば」

「えーっ、だってレイオとしか読めないもん。レイちゃんはレイちゃんだし」


無邪気に笑う希美ちゃん。

礼雄くんはゆっくりと病室の壁に背をもたれてしゃがみこみました。

「今日は学校で何かあった?大好きな恵ちゃんは?」

窓から外に身を乗り出して、礼雄くんを見下ろす希美ちゃん。

「うおっ、危ねぇな落っこちてくんなよ?

学校ねぇ……とくに何にもなかったな。担任は相変わらずうるせぇし。

つか何度も言うけど恵はただの幼なじみだから」

首を上にあげてダルそうに言う礼雄くん。

希美ちゃんは柔らかな表情のまま「ふーん」と言いました。