「そう、僕の部屋、四角い殻の中。お父さんとお母さんが大事に温めてくれて、いつの日か殻が割れたら、僕は大空へ飛び立つんだよ。

今はその日を待つ時間なんだ……

……なんて、そんなことを考えて逃げているだけだって気付いてる」


最後に聞こえないくらいの声で「気付いてるんだ」って言って、一真くんは窓口まで歩いて池を眺めます。

僕は考えていました。

「殻だったらさ……

確かに誰かが温めてくれなくちゃ、中のヒナは動くことができないけれど、破るのは他の誰でもない一真くんだよね。」

僕は一真くんの横に歩み寄ります。

「話すって実は凄い勇気がいることなんだ。僕にこうして話してくれた一真くんは勇気があるんだよ。

だから、僕はこうして朝に挨拶をすることでこれからも殻を温めるから、一真くんはいつか殻を破って飛び立とうね」

僕は学校の時間もあったので、「またね」と言って一真くんと別れました。