そうしているとキッチンからお母さんがやってきました。

「お待たせ。あら、何か気になるものでもあった?」

写真を見つめている僕達を見てお母さんがそう言いました。

「一真くんの写真を沢山飾っているんですね。玄関にも飾ってあったし」

お母さんは持ってきてくれたケーキと紅茶を置きながら笑います。

「ふふ、親バカよね。なかなか妊娠できなくて、ようやく授かった一人息子だからかしら本当に大切に思ってるわ」

紅茶の芳ばしい香りの向こうでお母さんは誇らしげな顔をしていました。

「なのに、どうしてこうなっちゃったのかしらね。やっぱり私たちが甘えさせて育ててしまったからかな」

悲しそうに呟いたお母さん。

すぐに僕達に笑みを見せてくれます。

「隣街でちょっと有名な洋菓子屋さんのミルクレープなの。どうぞ召し上がれ」

「いただきます」

柔らかい生地にフォークをたてて、一口頬張るとクレープ生地の独特な食感と一緒に、口の中に甘いクリームが広がりました。

「美味しい」