その日のホームルームで『月便り』が配られました。

前の席から順番に月便りが後ろに手渡されていきます。

「あー、先生ぇ」

すると前の方の席で秋草 小百合(あきくさ さゆり)さんが手をあげました。

「野村くんの机、プリントがいっぱいでもう入りません」

小百合さんが指をさした一真くんの机からは、プリントが溢れ出ていました。

確かにもう入りそうにはありません。

「んー、そうかぁ。じゃあ誰か野村に届けてやってくれないかな?」

教室がザワザワとしました。

そんな中で2人の手があがりました。

もちろん僕。

そしてもう1人は恵ちゃんでした。

「篠原と新田か。じゃあ、悪いけど2人で届けに行ってやってくれるか?」

「はい、勿論です」

僕と恵ちゃんは顔を見合せて席を立ち、一真くんのプリントを半分ずつ自分のカバンに入れました。

「新田くんなら手をあげると思ってたよ」

席に戻ると恵ちゃんがそう言いました。

「僕も恵ちゃんなら手をあげると思った」

そう言って2人で笑いました。