交差する場所でその男の子を待ちます。
ジョギングと言うほど早くはないけれど、散歩と言うほどゆっくりと歩いているわけでもなさそう。
少しだけ焦っている?そんな印象を歩き方から受けました。
男の子が僕の横を通りすぎていきます。
背が小さくて白い肌、その子は一真くんでした。
僕は声をかけます。
「おはようございます。良い天気ですね」
一真くんは少し驚いた様な顔をして振り向くと、小さな声で言います。
「お、おはようございます」
そうしてペコリと頭を下げると足早に行ってしまいました。
一真くんの声を初めて聞きました。
まだ変声期を越えないそれは優しくて、ちょっぴり恥ずかしそうな印象でした。
「うん、何事もまずは挨拶からだよね」
公園の真ん中にある時計塔を見るともう学校に向かわなくてはいけない時間でした。
これから一真くんはお家に帰るのかな?
お家では何をしているのかな?
学校に行きたいって思わないのかな?
そんなことを思いながら僕は学校へと向かっていくのでした。