だけどあたしは
もちろんその声が
誰なのか知っていた。
「坂下、こんなところで何をしてるの?何も言わずに飛び出していって、授業にも来ないし・・・。心配したよ?」
その声の主、リュウイチ先生は
本気であたしを心配してくれている。
そんなことわかってる。
リュウイチ先生は自分の生徒
みんなを心配している。
本当に優しい人なんだ。
それなのに・・・。
それなのに
あたしは・・・。
「坂下?ねえ、本当にどうしたの?いつもの坂下らしくないよ?」
そう。
いつものあたしじゃない。
いつもと違って髪を下ろしたのに
先生、気づいてくれないじゃない。
そろそろと近づいてくる
リュウイチ先生を
うらめしそうに見上げながら
あたしは心の中でつぶやいていた。