どこか遠くから
犬の遠吠えが聞こえて
あたしはふっ、と
我に返る。
寂しげだった夕闇は
いつしか漆黒の闇へと
姿を変えていた。
どうやらかなり
時間が経っているようだ。
あたしは一人で
ずっと泣いていたのだろう。
初めて塾をサボってしまった。
もし家に連絡がいってると
帰ってからまずママに怒られて
その後パパにも怒られるだろう。
そんなことを考えていると
どんどん気がめいってくる。
「坂下っ!」
あまりにも深く
自分の中に沈みこんでいたので
いきなりかけられたその声に
あたしは一瞬凍りついてしまった。