あたしのその声に
リュウイチ先生は
よっぽどびっくりしたのか
椅子から飛び上がらんばかりに
立ち上がって振り向く。
「おや、坂下だったのか。一体どうしたの?」
あたしは先生の目を見つめて
その中に新しい髪形のあたしが写っているかどうか
じっとのぞき込んでみる。
「いや、別に・・・」
先生の目の色が
普段と全く変わりないのを見て
あたしのテンションが
急激に下がっていく。
「別にってことはないんじゃないの。あんな声だしてたのに。何があったのかちゃんと言ってごらん」
先生の声は優しい。
とっても優しい。
優しすぎて
あたしの心に
突き刺さる。
「ほんとに・・・なんでもないです」
あたしはそれだけ言って
くるっと回れ右をして
講師室をあとにした。