真光塾に着くと
真っ先に講師室へ向かった。
ほんとは特に用なんてないけど
とにかくリュウイチ先生に
あたしを見て欲しい。
言い訳は自転車に乗ってる間に考えた。
今度の中間テストの対策の相談だ。
パパもママもやっと成績の上がってきたあたしに
だんだん期待をし始めていたから
ここで成績がまた落ちてしまうと
下手したらまた塾を変われと
言われかねない。
それだけは絶対に避けたかった。
ガラガラとたてつけの悪いドアを開けると
入ってすぐ左手にリュウイチ先生の席がある。
授業まではまだ1時間近く前なのに
先生は既に席についていて
教科書や副読本を見ながら
せっせとノートをとっていた。
「リュウイチ先生っ」
あたしの中から
普段は絶対使わないトーンの声が
自然に出てきたのには
自分が一番びっくりした。