『わかってるよ…
わかってた。
だけど、自分じゃどうすることも出来なかった。
気持ちを止められなかったの……ごめんなさい』
大粒の涙が池田さんの頬をつたう。
「池田さん、俺も勘違いさせるようなことをしていたなら謝るよ」
『先生は悪くないの!
どう考えたって、誰が見たって、私と先生は医者と患者だったもの。
ただ、私が好きな気持ちを押し付けてただけ。
今日、こんな風に話す機会をもってもらえて良かった、嬉しかったの。
私ね、先生が初めてじゃないの。こういうの……
前の彼氏にも振られたとき、同じように追いかけちゃった。
その彼は気にもとめずに、私なんて存在してないかのように振舞った。
寂しかった。
でも、先生は違った。
こうして注意してくれるんだもん。
私を見捨てなかったもん。』
初めて、池田さんの心の深い闇を感じた。
“見捨てられ感”彼女につきまとう闇。
彼女の過去までさかのぼって一緒に解決してあげることはできないけれど…
『今度はあなたが守ってあげる番でしょ?
自分の子どもを……
確か、女の子だっけ?』
中谷さんも同じ考えのようだ。