…ヒック……ウッ…ウッ……ヒックーーー………






肩を震わせて泣いているあいつ。





両手で覆い隠されたその表情は、見ることができなかった。






『……ウッ…だって……早坂さんが…ウッ……
中谷さんと付き合ってるって…北川さんがゆって……

ウッ…ク……ヒック…前も、横断歩道で……すれ違ったのに…ヒック…知らんぷりして……ウッ…

海でも、あたし……ウッ…勇気だしたのに……ヒック…』






なんだ、こいつ。






俺、かよ。






俺のことで、悩んでたのか?






そんなことで。






なんか、こいつには悪いけど……


嬉しいな。







「おまえ、ほんとバカ。」





そっと、胸に頭を引き寄せる。





<うわぁぁぁぁん>







俺の胸の中で声をあげて子どもみたいに泣くあいつ。





「俺、中谷さんと付き合ってないけど?」