「あのね…あたしが達也と付き合ってたのは知ってる?」
「…うん…」
「それで別れたときあたしが遊びだったって言ったのは社長に交際のことがバレて別れなきゃあなたの家潰すよ?って言われて…」
「潰す?」
なにをだ?
俺達が深刻な話をしているのに気づいたのか店員さんはメニューを持ってこようとはしなかった。
「あたしの家…一応芸能事務所なの。それでちっちゃくてあたしは融資の変わりに今の芸能事務所に入ったんだ…。それで達也が遊びだったっていったあと、春ちゃんに酷いことをしたって聞いて…」
「だから春ちゃんには悪いことしたなって思ったの…」
そうか、だからか。
「その話、俺にするより春にしたほうがいいんじゃねーの?」
俺は桜田雪乃が信じられると思ったから本性で言った。
少し驚いていたが、
「だよねー、一応…まだあったことない人だから言いにくいかなって思って奏斗くんに言ったんだよ。彼氏だっていってたし」
いきなり桜田雪乃も口調が変わった。
さっきまではおとなしい感じだったが、今では親しみやすい女に変わっていた。
コイツも猫被ってたのか。
「じゃー今度春も呼ぶか」
「そうだね」
俺たちは話をしたあと食事をして帰った。
しかし俺は春を傷つけているとは知らなかった。
好きすぎてたまには
ヤキモチだってやくよね。
なんで?
奏斗とやっと思いが通じたのに桜田雪乃となんかと食事に行ったりして。
あたしは部屋のベットの上で枕と格闘をしていた。
(なんで枕なのよ…by凪沙)
あたしはもう桜田雪乃とかとは関わりたくないんだよ。
もしかしたら奏斗、
桜田雪乃が好きになっちゃった?
そんなことをずっと考えているうちに
自然と頬に涙が流れていた。
やっぱ恋って…
つらいね……。
その日の夜、奏斗から電話がきた。
一応泣いているのをわからないようにして電話に出た。
「もしもし?」
「春?ちょっと頼みみたいなのがあるんだけど…」
なにそれ…。
あたしがめちゃ悩んでんのも知らないのに…頼み事って。
「どんな?」
でもやっぱり奏斗から電話がきたのは嬉しかったのでそう言った。
「桜田雪乃と会ってほしいんだけど……」
はっ!?
なんであたしが会わなきゃいけないの!?
「いやだ」
「なんで?」
は?
なんでなんて普通聞くか!?
あたしが桜田雪乃を一番嫌ってるの知ってるくせに。
「あたしが桜田雪乃嫌いなの知ってるでしょ!?」
「知ってるけど…会ってやってほしいんだよ……」
「意味わかんない!!」
あたしはそう言って電話を切った。
もぅいやだ…。
なんで両思いになったのにこんな思いしなきゃいけないの?
そのあとに何度かメールや電話があったが春はでなかった。
つぎのひに学校に向かったが、奏斗は来なかった。
はぁ〜
「唯(ユイ)〜今日帰りにどっかよらない?」
あたしは気分をまぎらわすために幼稚園からの親友の田中唯(タナカユイ)を誘った。
もちろん優と達也の幼なじみでもあるからあの事情は知っている。
唯は唯一あたしの家族が芸能一家だって知っている人物。
あたしが心を本当に許してるのも唯だけだしね。
「いいょ♪」
唯はあたしのことをかなり分かってくれている。
だからあたしが今日落ち込んでいるのを察してくれていいょと言ってくれたのだろう。
ありがとね唯。
あたしたちはカラオケに行った。
「で、奏斗くんとなんかあったの?」
気づいたかもしれないけど唯には奏斗と付き合ってることは言ってある。
「……まぁ…ね………」
曖昧な言葉で返したあたしに質問攻めにして来る唯。
いろいろな質問をしたあと最後に
「じゃー奏斗君のこときらいになっちゃったの!?」
「そんなわけないじゃん…でも…」
「じゃーあってやればいいじゃん!!桜田雪乃が何を言うか気にならないの?」
「気になるけど…」
唯は大声を出して
「じゃー行け!!」
ぅわ〜怖くなっちゃったよ。
唯は実はレディースの総長。
だから怒っているときはめちゃめちゃ怖い。
「…はぃ…」
仕方なくあたしは桜田雪乃に会うことになった。
「もしかすると、これで春は前に踏み出せるかもしれないじゃん!!」
そーだよね…
「ありがと♪唯」
「いえいえ」
あたしたちはこの後少し歌って家に帰った。
俺が昨日の夜電話してから一回も電話に出てくれない。
何が行けなかったのだろうか。
桜田雪乃に会うことだけでこんなに俺を拒絶しないだろ。
俺は花さんに(マネージャーですby凪沙)送ってもらっていた。
携帯が振動したのが分かった。
名前には『春』
俺は急いで出た。
「もしもし!?春!?」
『奏斗…』
やっぱり電話の向こう側の春は元気がなかった。
「俺、あの日なんかした?」
『してないよ…』
これじゃあ解決しねーな。
「春今どこにいる?」
『家だけど…』
「じゃー今から行くから!!」
俺はそれだけを言って電話を切った。