「大人しくしてるか?ウジ虫共」。
看守はそう言った。
「何だと?ウジ虫って言ったのかこいつ」
手に汗握りながらその様子を見ていると、襲撃者の一人が駆け寄って来た。

男は錠に向かって発砲した。

すると錠は壊れ、手早く扉を開けると、俺達に逃げるよう促した。

聞きたい事もあったが、状況が状況だ。

ひとまず素直に逃げといた方が良さそうだ。

俺達はぞろぞろと牢屋から出た。

しかしそう簡単にはいかなかった。

看守達が脱走に気づき、こちらに狙いを付けた。

どっちみち『処分』する予定だった訳だから、躊躇せず撃ってきた。

俺は全力で走った。

最前列にいたのが幸いして、俺に弾が当たる事はなかった。

が、後ろの方で叫び声が響く。

脱出の希望が灯った直後の絶望。

数人の人間がバタバタと倒れるのが見えた。

俺は振り向いた事を後悔し、すぐまた前方を見て走った。

先頭を走っていたのだが、不良に抜かされた。

むかつく余裕がある事に驚きつつ、階段を一段飛ばしで駆け上った。

地下にいたから一階に出た訳だ。

もうちょっとだ、そう言い聞かせたその直後、銃を持った男と鉢合わせになった。
警官のような制服を着ていた。

襲撃者ではない。

「貴様、脱走者か!」
怒鳴りながら銃を向けてきた。

体温が一気に下がる。
やばい。

男が引き金に指をかけたその刹那、男の首に拳が直撃した。

不良だ。

不良が後ろから不意打ちを食らわしたのだ。

男は呻き声を出して倒れた。

不良は素早く拳銃を奪い取ると、黙って走りだした。

俺は慌ててありがとうと言ったが、それでも奴は無言だった。

走り続けた俺達は、ついに外へ出る事に成功した。

続いて脱走者が次々に出てきた。
年寄り達も何とか付いて来られたようだ。
「やった…」

俺が呟くと、不良がこちらを見た。

「まだ安心出来ねえだろ、こっからまた逃げるんだからな」

確かにそうだ。外に出たからといって安心していられない。

でもどこに逃げればいいんだ?

きょろきょろしていると、襲撃者の一人らしき男が来た。