走り出しそうとした次の瞬間、目の前に男が飛び出してきた。

「!…」

スーツを着た男は俺に向かって手を伸ばしてきた。

避けようとしたが、相手の動きは予想より速かった。

襟首を捕まれ、そのまま地面に叩き付けられた。
「何すんだ、放せ!」

男は無言のまま俺を押さえつけ、両手を掴み手錠を付けた。
やがて抵抗をやめると立たされ黒い車に押し込まれた。

車はどこかに向かって走り始めた。
恐怖が押し寄せ始めた。

30分位経っただろうか。
目的地に着いたらしい。
そこは大きな建物だった。
無機的で、デザインなどどうでも良いとでも言いたげな外観だ。


もっともだ。

ここは収容所。

俺はここで殺されるんだ。

車から下ろされ、乱暴な手つきで連行された。

施設内も外観と違わず無機質だった。

エレベーターに乗せられ、地下へ進む。

そこにあったのは、映画やドラマで見る刑務所によく似た光景だった。

鉄格子が張り巡らせられた牢屋に人が沢山いる。一人一部屋じゃないのは牢屋が足りないからだろうか。

中にいる人は老若男女様々で、犯罪者の類には見えなかった。
「この人達はいったい…。」
俺が呟くと、黒ずくめの男が口を開いた。
「こいつらは処分されるんだ。お前と同じ劣等組だ。さあ早く入れ。」

俺は牢屋に放り込まれた。

そして男達は黙ってその場を後にした。
俺は鉄格子を掴み力一杯開けようとした。
すると後ろから

「無駄な事をするな、開くわけない」。
と声がした。

振り向いて誰が発した言葉かすぐ分かった。

1人の男が睨むようにこちらを見ていた。