いかにもバカっぽい小坂と、真面目が服を着たような中里。

接点が無さそうなのに、小坂が中里の名前を知っていたことが意外で、つい聞き返した。



小坂はどこか含みのある笑みを浮かべて答える。

「同じ中学だし」

「あ、そうなんだ」


うん、と頷いて、小坂はオレンジジュースを一口飲み下ろした。

それきり私たちの会話は途切れ、小坂はぼんやり空を眺め、私は黙って弁当を口に運んでいた。



足を投げ出すように伸ばし、今にもひっくり返りそうなほど首を後ろに傾けた小坂の、白い横顔を私は見る。



高く昇った太陽が、頬にまつげの影を落としていた。

脱色された髪が、更に淡い色に輝いている。

すっと通った鼻筋、薄い唇。顎のラインは細く尖って、開襟したシャツの中へと潜っていく。

針の先で描いたように繊細な輪郭だと思った。



卵焼きをもぐもぐと噛みながら、私は美術館で絵を見るように小坂の横顔を見ている。

だから、見つめた先の長いまつげが瞬いて、小坂の茶色い目が私を捉えたとき、息を飲んだ。


美しい絵画の中から覗き込まれたような気持ちになったのだ。