小坂こそ、何で毎日毎日、ここにいるの。

問い返すが小坂は何も言わず、私と向かい合って座り込んだ。

目線の高さが同じになる。
見えた顔は想像通り、半笑いの表情をしていた。

「オレンジジュース、飲む?」

私の言葉に答えないまま、手を伸ばして紙パックを掴み、差し出してくる。

その動作にため息をもらしながら首を横に振ると、そう? と言ってストローを自分の唇にくわえた。




人のいない場所に行きたかった。

最初に屋上にやって来たのは、そういう心境からだった。

しかし実際のところ、状況は少し変わっている。

屋上に来ても一人にはなれない。先客が爆睡していたり、オレンジジュースを撒き散らしたりしている。

しかも、もう私の手には鍵がないのだ。私が屋上に来られるのは、小坂がいるときだけということになる。


それでいいと思ったから鍵を小坂にあげたのだけれど、小坂はそんなことは知らないだろう。

たぶん、バカだし。

私も言う気なんてない。

この気まぐれな時間を終わらせたくないと、そう思っていた。