これは確かあたしの着物が初めて売れた時に言われた言葉。
あの女性も値打ちの有る人なのだろう。
いつの間にかあたしの着物は、ある限られた上級階級の女性しか着れないものになっていた。
「きさらは御祖父様の才能を受け継いだのね。
人間国宝の御祖父様なんて誇りよね」
着物のデザインを初めてから付き纏う様になった文字。
「人間国宝の御祖父様」
あたしの祖父は着物のデザイン(昔の言葉だと、絵付け?)について、定評のある人で、死ぬ直前には人間国宝を受賞?したつわもの。
でも、あたしが生まれる前に死んでしまっている。
だからあたしはなんの手ほどきも受けて無いの。