声を掛けられた方に振り返ると、一人の男の子が立っていた。


男の子の手には、私がさっきまで使っていた参考書があった。




「はい。どうぞ」


男の子は私に参考書を手渡した。




「……あっ、ありがとうございます」


私は参考書を受け取ると、軽く頭を下げてからそのまま立ち去った。




―――――…


……これが私と陸との、最初の出会いだった。




それから私たちは、あの公園でよく逢うようになった。


奇遇なことに予備校も一緒で、狙っている高校も同じだった。




いつしか私たちは、お互いを"異性"として意識するようになっていた。