「…………」


私はなにも言えなかった。




「……ほんとにそれで、お前は後悔しないか?」


伊吹が優しい声でそう呟いた。




「……はい」


後悔なんて……もうしてない。




だって……やっと一歩前に踏み出せる時がきたんだもん。


……やっと。




「……そっか」


伊吹はニコッと笑った。




「……私は後悔なんてしてません。だってやっと前に踏み出せる時がきたんだもん」


でもこの後悔がムダになるなんて思ってない。




……むしろ自分を変える大きなチャンスになったんだもん。


このチャンスはムダにならないよ。




絶対に……。