「……私ね、今なら前に進めそうな気がするんです」


私は伊吹から離れると、そう言ってニコッと笑った。




「……え?」


伊吹が不思議そうな顔をする。




「今ならなにもかも忘れられそうな気がするんです。……陸のことも」


私は小さな声でそう言うと、伊吹はおもむろに口を開いた。




「……お前は本当にそれでいいのか?」


その言葉に私は、ゆっくり顔を上げた。




「……え?」


伊吹をジィーッと見つめる。




「お前は本当にそれでいいのか?……陸のこと、好きだったんだろ?」


伊吹の言葉が……胸にチクリと染みた。