……不思議で仕方ない。


どうして悲しくないんだろう……。




「……そっか」


伊吹の目は、少しだけ潤んでいた。




「あの時すぐに救急車を呼べばよかったのに……あまりにもびっくりしてその場から動けなかったんです。……頭の中が真っ白になって、救急車を呼ぶことを忘れてたんです……」


私は今まで閉じ込めていた胸の内を、初めて伊吹に語った。




「…………」


なんとなくだけど……伊吹先生なら、私の言葉をちゃんと聞いてくれそうな気がしたんだ。




「……陸を殺したのは、私なんです」


私はそう言って俯いた。




「……葉月」