……言えない。


陸のことだけは、絶対に誰にも言えない。




……でももし陸のことを知られたら、私はどうすればいいんだろう。


せっかく忘れようとしてるのに、また過去のことを思い出すのは……もうやだな。




「お前の今の成績じゃ、目指してる大学は難しいぞ」


伊吹はグラウンドを眺めながらそう言った。




「……わかってます」


でも今は、もう少しだけ時間が欲しいの。




……自分が強くなるための、時間が。


前に進むための、時間が。




「……羽目を外すのはいいが、ほどほどにしておけよ」


伊吹はそう言うと、私の肩を叩いてから教室を出て行った。