「ええ、ごめんなさい…ちょっと、頂いたお手紙を思い出しちゃって。
 新年早々の放送なのに湿っぽいムードになってしまいましたけど…さて、気を取り直して明るい曲を此処で行っちゃいましょ!
 わたしもこの曲大好きなんだあ…埼玉のペンネーム、みいのママさんから頂きました、イーグルスでテイク イット イージー……』

 マイクのスイッチが切られ、ヘッドフォンに再び大越の声が入った。

(続けられるか?)

「うんゴメン、大丈夫。あぁあ、わたしとした事が大失態だね。
 こりゃあ新年一発目の始末書もんかな」

 誰の目にも千晶が無理に明るく振る舞っているのが判った。

 大越は敢えて余計な言葉を掛けないようにした。

 出だしこそ躓いたが、その後はいつもの千晶のペースで番組が進行して行った。

 何曲目かのリクエスト曲を掛けていた時、モニター室に千晶の声が入った。

(ねえ、最後はエディット・ピアフを用意して)

「曲は何にします?」

(【バラ色の人生】で行こうか)

「了解。用意しときます」

 バラ色の人生か……

 千晶はそぐわない題名の曲かなとも思ったが、彼女なりに考えて選曲したつもりだった。