『……という事でありまして、弟達夫は天に召されました。

 生前、彼に贈って上げる事の出来なかったエディット・ピアフの曲ですが、本来なら先にあの世へ行かなければならない私が代わりに聴き止め、あの世で渡して上げたいと思います。
 おっと、あの世で私が渡すのは無理でした。考えてみれば、私は地獄で弟は天国でしたから。
 三途の川の渡し人にでも頼むしかないですね。
 そういう事ですので、どうかリクエストの程、宜しくお願いします。』



 梶谷からの年賀状から一週間程して送られて来た手紙には、弟の死を悔やむ言葉が書かれていた。

 ブースの向こうで、大越がスタートのキューを送る。


「こんばんは。お正月気分も七草を過ぎると幾分薄らぐものですが、皆様はどんなふうに過ごされましたでしょうか。
 わたしは、相変わらず仕事でしたよ。
 それと、皆さんからのお葉書や手紙を整理してまして、これが結構毎年この時期は大変なんですよ。
 でも、それだけこの放送を楽しみにして下さってるんだなって、すごく勇気付けられてます……』

 何故か千晶は此処で言葉を詰まらせた。

 マイクに千晶の微かに啜り泣く声が拾われた。

 モニター室で心配げに見つめるスタッフ達。

 大越がヘッドフォンで大丈夫か?と聞いて来る。

 BGMのボリュームを上げようとした音声スタッフに、千晶が首を振った。