アーレイが町を去ってもうすぐ三年、一言「俺は騎士になってやるからな」と言い残して居なくなってしまった。


騎士、といえば王国最大の名誉だ。
十五の若者が憧れるのも無理は無かった。しかし、十二の少女にその憧れは果たして理解出来たかと言えば疑わしい。


――そして彼は、本当に騎士になった。その事を手紙で知ったときは、思わず自分のことの様に喜んだものだ。



「ねぇ、アーレイ。私、アップルパイを焼いたの。食べながら、お話を聞かせてくれる?とっておきの――ええと、例えば、怪物を退治したとか」


アーレイはにこりと笑い、少女もまたにこりと笑った。