アーレイは歎くなと言ったが、エトワールにそんなことが出来るはずが無かった。

いや、アーレイの死を完全に忘れてしまったかのように、来る日も来る日も港の桟橋で、水平線をぼんやりと見詰めていた。


やがてエトワールはいろいろなことを忘れて行った。

ただ一つ残った、一つの想い。

それを言葉にする術も、エトワールは忘れてしまった。

アップルパイの作り方も、仕立屋で働いていたことも、孤児院のことも。