そしてとうとう、あの帆船は現れた。真っ白い帆に風を受け進む凱旋の船だ。


しかしその船の甲板にアーレイの姿はなかった。
てっきり、この間の様に、手を振りながら、エトワール、と叫ぶものだと思っていた。


しかし、待てども待てども、船から降りて来るのはエトワールの知らない顔ばかりだった。
アーレイに似た顔や姿はない。

悪い予感がした。


――いや、もしかしたら、アーレイは自分に気付かずに家に向かってしまったのかもしれない。
だとしたら大変だ。ノックをしても、誰も出てこないのだから。


市場で林檎を買って、石畳の道を走った。
あの金色の髪を、優しげな笑顔を目指して。



―しかし、そこには誰も居なかった。