この日はお祝いやって言う翔太の言葉で外食することにした。
わたしの大好きなカニクリームコロッケを洋食屋さんに食べに行った。
美味しかった。
というより幸せすぎて何でもノドを通る気がした。
でも1つだけ通らないものがあった。
それはタバコ。
おなかの子のことを考えるとタバコなんて絶対吸いたくなくなった。
何でわたし、今まで吸ってたんやろ…って後悔までした。
あとお酒ももちろんやめた。
毎日しとった晩酌だけど嫌々やなく進んで辞めれた。
そんなわたしを翔太は褒めてくれて、翔太は絶対わたしの前じゃ飲まないし、タバコも吸わないって約束してくれた。
こんなええ旦那が出来てええんやろか??
幸せに満ちとった。
人生の設計図のパズルが解け始めとった。
でも…この先粉々にされてしまうということをわたしはまだ知らない。
わたしの人生、そううまくいくもんやないってまた気付かされる。
土曜日、翔太と一緒に産婦人科に行った。
妊娠2ヶ月やった。
エコーで見た。
先生に大きさとか聞いて、自分の中にこんな小さな命がいるんやって実感した。
絶対に守りたいって思った。
命にかえたって。
8週目であった赤ちゃん。
わたしたちはウキウキしてた。
それよりも大きなこと。
それは結婚。
まだプロポーズはされてない…。
もしかして未婚で産むんやろか??
そんな不安もあった。
母親や叔母、洋介くんや裕太家に集合してもらい、言いに行ったらみんな大喜びしてくれた。
母親は
「孫かぁ~…、そんな歳なんやなぁ。」
って言いながら楽しそうやった。
そして志穂や猛、ウィルや鈴らにも言うとみんなも大喜びやった。
仕事を辞めると伝え、みんなにお祝いの言葉を貰った。
ほんま嬉しかった。
一応締めまでは働いてってことだったんであと2週間程は働くようにしとった。
そして普通に生活してたある朝。
いつものように7時くらいに起きると翔太がおらんかった。
あれ?どこ行ったんだ??
そう思った。
そして壁を見たら昨日用意しとったスーツがない。
今日、えらい早く出勤したな。
なんかあったんかな??
そんなことを思ってノッソリ立ち上がった。
そしてテーブルを見ると手紙、そしてその上に小さな箱。
ドキッとした。
この箱の大きさはまさしく…だったから。
急いで手紙をあけた。
【次のページに書いてあるのは本物の手紙をうつしたものです。】
里美へ
初めて手紙書くからうまく書けへんかもしれん。
言葉たりんかったらごめんな!
里美と初めて出会った時、山崎さんにからまれとったな。
何してんねん、このオッサンって思って見たらタイプの女がおった。
初めて言うけど俺、一目惚れやったんよ。
でも里美にはそのとき彼氏おったよな。
それから色んなことがあって里美と付き合うことになった。
絶対最後の女やって俺、わかっとった。
それくらいほんまに惚れとったから。
案の定、里美と付き合ってた期間楽しいことしかなかったな。
そりゃ里美は気強い女だし、ケンカもした。
いつも俺が折れとったな。(笑)
そんな毎日が幸せやったんよ。
これからもその幸せ、続けていきたい。
出会って3年、この3年よりももっと里美のこと幸せにしたる。
約束する。
だから俺と結婚してください。
一生守ります。
おなかの子と一緒に。
俺を信じてついてきてくれるなら帰ったとき指輪をはめててください。
もし気にいらんかったらごめんな。
めんと向かってやったら多分半分も言えんし手紙にした俺を許してください。
翔太
そのときわたしは手紙を抱きしめて涙を流してた。
翔太の気持ちが詰まりまくった手紙、ほんまに今でも宝物。
誰もおらん部屋で
「ありがとう、ありがとう。」
ってずっと言うとった。
そして指輪をソーッとあけた。
そこにはダイアモンドとわかる宝石とピンクの宝石がついたリング。
それはわたしの誕生石。
見るからに高そう…。
無理したんやないかな…。
不安になったけど嬉しい。
そして裏には刻印。
前にサイズを教えてたこともあって左手の薬指にぴったりやった。
手を上にあげて見たらキラキラ光る指輪。
宝物がまた増えた。
あえて翔太に連絡をしなかった。
黙って指につけておこうと思って。
泣きはらした目で職場に行くと職場の人たちが指輪に気付いてみんなからかなり見られた。
かなり羨ましがられた。
素敵な彼氏やって言われた。
翔太はほんま自慢の彼氏や。
そして翔太の大好きなメニュー、から揚げとオムライスの準備をして翔太の帰りを待った。
そして玄関から音がした。
緊張した。
きっと翔太もしとるやろう。
「おかえり。」
そう言って翔太を見ると翔太の目線は指へ。
その瞬間翔太は笑った。
「ただいま。」
そう言うとわたしのそばにきて抱きしめてくれた。
「翔太、ありがとう。ほんま嬉しかった。」
「幸せにしたるからな。」
そう言ってギュッと抱きしめてくれた後にキスをした。
「指輪、気にいらんかったらごめんな?ほんまは一緒に買いに行きたかったんやけど…プロポーズ口で言うの…出来ひんくて…。」
「ほんまヘタレやな!!」
こんな憎まれ口を叩いたけどほんま気にいってた。
翔太はセンスがええもん。
「ご、ごめんなさい…。」
こんなやってすぐ謝る。
そんな翔太も大好きや。
そして式の準備を進めていった。
式は4ヶ月後。
妊娠6ヶ月にはなっとるけどできるだろうってことで。
翔太の親のところにも挨拶に行った。
初めて会った。
その初めてが妊娠しましたから結婚しますだなんて…最低だ。
そう思ったけど翔太の親も翔太と同じように穏やかな人ですごく喜んでくれた。
お兄さん、弟さん2人も来てくれた。
志水家では結婚第1号らしい。
みんな祝福してくれた。
そして式の話とか、うちの話とかいろいろした。
母子家庭、しかも母親はスナック。
しょうもない家庭。
ええ母親とは言うことはできひん。
でも、たった1人の母親や。
包み隠さず全て話した。
会いたくないって思うやろうな。
これから親戚として付き合っていくのも嫌やろうな。
そんな思ってたのに翔太の両親は早くお会いしたいって言うてくれた。
ほんまありがたかった…。
そしてあわただしく過ぎていく日々。
検診、式の打ち合わせ、親との食事、色々なことが多すぎて毎日が大変だった。
仕事も辞め、式の段取りを一生懸命やっとった。
招待状の作成、1人1人に手紙を書く、曲決め、長さとかの打ち合わせ、衣装…。
くたくたやった。
でも、当日のことを考えれば楽しみ。
頑張れた。
チャペルで式を挙げることにした。
そして…妊娠17週目がきた。
月に1度の検診。
ここでわたしはどん底に落ちる。